辺見庸
電動こけし
瓦礫の原に
三段くねり式の
電動こけしクマッコ1号が
一本 縦に在った
グィーングィーンと生きていた
専用ローションは沖に沈んでいる
ナヰと大波にもまけず
黒いクマッコは
グィーングィーンと ずっと
くねりつづけている
ピラピラとこきざみに動くべき
さきっぽの小さな舌は
大波で切れて
沖にながされ
鮟鱇にくわれた
舌なしのクマッコは
一本 ひとりで 口あけて
振動し くねりつづけている
高い線量のために
あんなにも木賊色になった *「木賊」に「とくさ」のルビ
空の下でも ひとりで くねりつづけている
ゴイサギが飛んでいる
空は晴れ
海はいま
すっかり凪いでいる
三段くねり式の
電動こけしクマッコ1号が
一本 縦に在った
グィーングィーンと生きていた
専用ローションは沖に沈んでいる
ナヰと大波にもまけず
黒いクマッコは
グィーングィーンと ずっと
くねりつづけている
ピラピラとこきざみに動くべき
さきっぽの小さな舌は
大波で切れて
沖にながされ
鮟鱇にくわれた
舌なしのクマッコは
一本 ひとりで 口あけて
振動し くねりつづけている
高い線量のために
あんなにも木賊色になった *「木賊」に「とくさ」のルビ
空の下でも ひとりで くねりつづけている
ゴイサギが飛んでいる
空は晴れ
海はいま
すっかり凪いでいる