高村光太郎

雪白く積めり

雪白く積めり。
雪林間の道をうづめて平らかなり。
ふめば膝を没して更にふかく
その雪うすら日をあびて燐光を発す。
燐光あをくひかりて不知火に似たり。
路を横切りて兎の足あと点々とつづき
松林の奥ほのかにけぶる。
十歩にして息をやすめ
二十歩にして雪中に坐す。
風なきに雪蕭々と鳴って梢を渡り
万境人をして詩を吐かしむ。
早池峯はすでに雲際に結晶すれども
わが詩の稜角いまだ成らざるを奈何にせん。
わずかに杉の枯葉をひろひて
今夕の炉辺に一椀の雑炊を暖めんとす。
敗れたるもの卻て心平らかにして
燐光の如きもの霊魂にきらめきて美しきなり。
美しくてつひにとらえ難きなり。

          「典型」より

https://kotarocafe30.blogspot.com/2019/01/blog-post_31.html



高校生の頃 教科書に「道程」の一節と東山魁夷の絵とがありました。
なんか説教臭いなと思いました。20代で読んだ智恵子抄はセンチメンタルで苦手だなと思いました。
で今50代で「きっぱりと冬が来た」の詩がしみじみと突き刺さる思いです。
なんか晩年のほうがいいなと思いました。これには載ってないけど「雪白く積めり」がいいな
と思うのでした。文学の先生は「可哀想にあんな山奥で」と評するけれど
光太郎さんは楽しかったんじゃないかなと思うのです。
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